2006年度梗概
修士
全球海面水温データの比較検討
岩崎 慎介
最も有名な全球海面水温データとしてNOAAによって提供されているReynolds OI SSTがある。このデータセットは熱赤外放射計と現場観測データを用いて作成されており多くの研究(乱流熱フラックスの計算、数値予報モデルの境界条件)に用いられている。熱赤外放射計は高分解能で観測出来るが雲域での観測が出来ない。一方、マイクロ波による海面水温観測は低分解能であるが雲域での観測が可能である。近年では熱赤外放射計だけではなくマイクロ波放射計によるデータを用いた全球客観解析データセットが公開されている。本研究では現在公開されている5種類の全球海面水温データセットの違いや特徴を明確にするために、これらのデータセットの比較検討と精度検討を行った。また、その海面水温データの違いがどの程度潜熱フラックスに影響するのかを調べた。その結果、Reynolds OI SSTは時空間分解能が低いため、海面水温の勾配が強い海域では他のデータとくらべて1℃以上の平均差、二乗平均差がある事が分かった。この差は潜熱フラックスに換算すると30~40W/m2にもなる。またMGDは他のデータと比べて非常に精度が良い事が分かった。 |
西部熱帯太平洋におけるバリアレイヤーと淡水フラックスの関係
武井 誠司
熱帯域は地球上の降水の約7割が存在している事から、全球での水や熱の輸送を考える上で重要な地域である。西部熱帯太平洋域は暖水プールと呼ばれる大量の高温の海水が存在し、年間降水量も非常に多い事が知られている。また、この海域はバリアレイヤーが存在する海域という事でも有名である。本研究では、アルゴフロートによって観測された水温・塩分データを用いて、熱帯太平洋におけるバリアレイヤーの変動特性について調べた。西部熱帯太平洋でのバリアレイヤーの発生メカニズムとして混合層が薄くなる事でバリアレイヤーが厚くなると言われていたが、バリアレイヤーの厚い海域での混合層厚の分布から、混合層が平均値より厚くなっている場合も確認できた。混合層が薄くなりバリアレイヤーが厚くなる場合についても、従来、言われていた2つのメカニズム、すなわち、(1)大量の降雨による表層での塩分低下にともなって混合層が浅くなること、(2)中央太平洋からの高塩分水の潜り込みによって混合層が浅くなること、が独立に存在すると言うよりも、両者が一体となって、バリアーレイヤーの形成に寄与していることが、本研究の結果から示唆された。 |
KEOブイデータの解析と再解析データとの比較
岩部 然育
黒潮続流域は黒潮から運ばれてくる暖水と北西の季節風の効果によって冬季に海洋から大気へ大量に熱が輸送される重要な海域として知られている。このような海域での大気-海洋間の実測モニタリングは強い海流と冬季の強い季節風の影響で非常に難しいとされていたが、2004年6月にNOAA/PMELがKEOブイを設置し連続的に海上気象パラメータを観測するようになった。そこで本研究では、KEOブイデータの解析及び2種類の再解析データ(NRA1,2)との比較検討を行った。比較の結果、短波放射は、夏季にNRA1が過大評価、冬季に過小評価することがわかり、この原因はNRA1の雲量に問題があることがわかった。潜熱フラックスは、NRA1が38W/m2、NRA2が60W/m2と大きく過大評価していることがわかった。この大きな差をアルゴリズムによる効果と物理パラメータによる効果に分けて定量的に評価したところ、再解析データはアルゴリズムの違いの効果によって50W/m2過大評価することがわかり、再解析のアルゴリズムに大きな問題がある事がわかった。総熱フラックスは、常に再解析データが過大評価することがわかり、再解析データは、現実よりもはるかに海洋を冷やしていることがわかった。 |
学部生
2006年4月に駿河湾で発生した急潮
永井 美雪
急潮は、それに伴う強い流れによって定置網の流失や破損などの沿岸域の漁業に多大な被害を及ぼすだけではなく、水温急上昇も同時に起こるため沿岸域の海況や漁況に多大な影響を与える。しかし、一方では沿岸海域での海水交換を促すために環境保全に大きく貢献している。本研究では、2006年4月に駿河湾で発生した急潮について、同湾内で観測した水温・流速・潮位などのデータと、もっと広域をカバーする衛星画像などを用いて解析を行った。また、過去に同湾で発生した急潮との比較も行った。その結果、2006年4月に発生した急潮は、黒潮系暖水が湾内に流入したことが原因であることが分かった。また、水温や潮位の伝播速度について解析をおこなった結果、それぞれの値は、38cm/sと277cm/sであった。 |
全球海上風データセットの比較検討
川面 絢子
リモートセンシング技術の発達により、地球規模での継続的な海洋観測が可能となったが、観測センサーによって、観測結果の特性が異なることも予想される。そこで、本研究では、4種のマイクロ波センサーによって観測された、7種類の全球海上風速データセットの相互比較を行った。一般的にマイクロ波散乱計は降水下において過大評価することが知られているが、本研究でもマイクロ波散乱計(SeaWinds)はマイクロ波放射計(SSM/I、AMSR-E、TMI)と比較して降水量の影響を強く受け、多降水であるほど過大評価する傾向が見られることが明らかになった。また、観測センサーが異なるデータセット同士では主に沿岸域で大きな差が生じ、同一のセンサーで観測時刻の異なるデータセット同士ではサンプリング誤差によると思われる差が見られた。 |
黒潮続流域周辺海域の大気海洋相互作用
鈴木 健之・鈴木 誠一郎
黒潮続流域は、海洋から大気への大量の熱輸送が存在する重要な海域として知られている。一方、北太平洋中央部では降水が少なく蒸発が盛んなため、高塩分の北太平洋回帰線水が形成され、その形成後、亜表層に潜り込んだ回帰線水が西部北太平洋での塩分極大層を形成している。本研究では、日本の南西海域における冬季の照洋丸観測データの解析を行った。水温・塩分データを解析した結果、従来、考えられていた北回帰線水形成域よりもずっと西方の日本南方海域においても、冬季における海面からの活発な蒸発や鉛直的な混合によって、高塩分の水が形成され、その高塩分水は、北回帰線水と関連する亜表層での塩分極大にも大きな影響を与えている可能性が明らかになった。 |
日本における温暖化と異常気象
宮野入 泰弘・小池 美華
本研究では、日本における温暖化と異常気象の近年における実態を、地上観測データを用いて調べた。その結果、静岡における年平均気温は、1940年以降の66年間で約1.4〔℃〕上昇していた。また、全国9地点のデータを調べた結果、すべての地点で顕著な温暖化傾向を確認できた。静岡における月ごとの月最低気温データを調べた結果、1月と4月の温度上昇の値が最も大きく、66年間で約2.3[℃]と約2.2[℃]も上昇していた。一方、静岡における異常高温は1961-2003年で21回観測されたが、そのうちの13回は1990年以降に観測されていた。また、全国12地点の集中豪雨の年積算日数も平均すると、増加傾向にあることが分かった。さらに、静岡は全国的にも集中豪雨や年積算降水量の多い地点であることがわかった。 |