2007年度梗概

修士

再解析データによる台風の再現性
岩城 大輔
再解析データは、過去の観測データの同化や最新の数値モデルの利用によって長期間にわたる、均一で現実に近いデータを提供している。短期間で大気と海洋に大きな影響を与える熱帯低気圧も再解析データによって再現されていると考えられるが、過去の様々な研究から、実際の観測データと再解析データの値は必ずしも一致している訳ではないこともわかっている。そこで、本研究では再解析データによる台風の再現性について調べるために、複数の再解析データと台風の観測データとの比較を行った。使用データは気象庁から提供されているベストトラックデータとNRA1,NRA2,JRA25の3種類の再解析データである。その結果、定性的にはどの再解析データも熱帯低気圧の中心位置を比較的精度良く再現していることがわかった。しかしながら、最大風速については、どの再解析データにも15m/s以上の大きなBiasが存在し、相関係数も小さいことから定性的にも定量的にも再現が十分にされていないことがわかった。中心気圧については、高い気圧ではBiasが3hPa以内と差が小さいが、中心気圧の低いときはBiasが-36hPa以上と大きく過大評価していることがわかった。



AMSR-E輝度温度データを用いた海面大気比湿の推定
日原 勉
人工衛星データから海面大気比湿を推定する、高精度海面大気比湿推定アルゴリズムを作成する事を目的としている。また、作成したアルゴリズムによって推定された海面大気比湿、および既存の全球海面大気比湿データの精度検証を行った。本研究では、ICOADSに収録されている、2005年における船舶によって観測された海面大気比湿データを真値とし、その値をAMSR-E輝度温度データによって推定するアルゴリズムを作成した。また、水蒸気の鉛直構造の情報をアルゴリズムに反映することで、推定精度を向上させる試みも行い、最終的には、3種類の海面大気比湿推定アルゴリズムを作成した。本研究において作成したアルゴリズムを用いて推定した海面大気比湿の推定精度を、アルゴリズム作成とは独立な2003−2004年の船舶データを用いて検証をした結果、最も推定精度が良かったアルゴリズムにおいて、RMSEは1.55 g/kg、相関係数は0.958であり、バイアスはほぼゼロだった。また、水蒸気の鉛直構造を考慮する事が推定精度向上につながることがわかった。さらに、本研究で作成したアルゴリズムは、既存の人工衛星データより推定された海面大気比湿よりも高い精度の海面大気比湿を推定する事ができた。



学部生

台風が海洋へ与える影響
甲賀 達也・桑田 靖久
台風は夏から秋にかけて日本に接近、上陸し私たちの生活に大きな影響を与える 気象現象である。そもそも台風は発生から消滅までの期間内の大半は海洋上を移動するため強風や短時間の多量の降水によって海洋にも陸上と同じく様々な影響を与えていると考えられる。本研究では、近年になって観測が始まったKEOブイとArgoフロートの海洋観測データを用いて2005年に発生した台風が海洋へ与えた影響を調べた。その結果、台風の降水により海面塩分の減少が確認できたので、降水があった時刻に対しての海面塩分の変化量を定量的に見積もることを試みた。また、亜表層の水温、塩分の構造にも台風が影響を与えている可能性があることが分かった。



日本における温暖化と異常気象
中兼 雅彦・本松 太郎
本研究では、日本における温暖化と異常気象の実態を、地上観測データを用いて解析した。その結果、日本全国155地点における年平均気温は1961〜2006年の46年間で1.15℃上昇していることがわかった。上昇率が特に顕著になり始めたのは1980年以降で、1980〜2006年の27年間における年平均気温上昇量は1.23℃であった。また、温暖化による気温上昇と共に異常気象の発生数にも変化が現れ、特に異常高温の増加が顕著であり、70年代では1年間で平均70回ほどの頻度で起こっていたものが90年代では1年間で平均124回と2倍近くにまで増加していることがわかった。また、集中豪雨も多く発生している年が1995年から続く傾向があることがわかった。



海面熱フラックスを用いた海洋南北熱輸送量の推定
八木