2004年度梗概

修士

全球顕熱フラックスデータセットの作成・比較・精度検証
大西 桂介
本研究では、1992年1月から2000年12月における、7種類の全球顕熱フラックスデータセットの相互比較を行った。全平均値の分布は、西岸境界流域及び高緯度において顕熱フラックスが大きく、低緯度においては小さいといった特徴がすべてのデータセットにみられた。しかしながら、その値については、データセット間において大きな差が存在することが分かった。さらに顕熱フラックスは、冬季における西岸境界流域において非常に大きいので、この時期の、この海域における顕熱フラックスの比較を行った。その結果、冬季の西岸境界流域おいては、最大で約100[W/m2]の差がデータセット間で存在することがわかった。また、経年変動については全てのデータセットにおいて定性的には良く一致していた。次に、顕熱フラックスの推定精度を検証するため、現場観測値であるブイとの比較を行った。相関、RMSD、RMSR、Biasについては、本研究で新たに作成したデータセットが最も良い結果を示したが、Biasに関してはHOAPS2が最も小さい値となった。さらに、誤差解析を行い、本研究で作成した顕熱フラックスの推定精度を向上させる為には、風速と気温データの推定精度向上が必要不可欠である事が分かった。



熱帯太平洋における降水量とバリアレイヤーの関係
安田 陽
本研究ではTRMM衛星で観測された降水量と、Argoフロート、TAOブイで観測されたSST、SSSデータを用いて、降水量と海洋構造の関係を定量的に調べる事を試みた。1時間平均値、1日積算値、月積算値の降水量データと海洋構造の関係を調べた結果、1日積算値の場合、降水量が閾値(15mm/day)を超えた時のSSTは、降水が無い時のSSTよりも高い場合が多く存在する事が示された。一般に降水の温度はSSTよりも低いと考えられる為、降水があってもSSTが高くなるのは興味深い現象である。一方、降水量が閾値を超えた時のSSSは、降水が無い時のSSSよりも低い場合が多く存在する事が示された。これは、降水と海水の混合によりSSSが減少する事を示している。また、Argoフロートの観測データから密度を計算し、MLD、ILDを求め、両者の層厚の差であるBLTを計算した。降水量が閾値を超えた時のBLTが、その前の時間で降水が無い時のBLTよりも18m厚くなっているとともに、SSSが減少していたことが確認できた。これから降水によってBLTが形成された例を確認することができたと考えられる。



アルゴフロートデータを用いた混合層内の貯熱量変化の推定
金ヶ江 梓乃祐
2000年より開始されたアルゴ計画により現在までに投入目標数(3000本)の約50%が投入され、準リアルタイムでの混合層内の貯熱量変化が可能となった。また、海洋混合層は、海洋表層の境界層であり、大気や海洋を含む気候システム全体の変動を理解する為の重要な要素である。そこで、本研究では2002年1月〜2003年12月までのアルゴフロートデータを用いて、西部太平洋中緯度域における混合層内の貯熱量変化を求めると共に、総熱フラックスと比較した。その結果、貯熱量変化と総熱フラックスの時間変化は、冬季を除いて概ね合っている事がわかった。この冬季に生じる残差の原因は熱移流フラックスであると考え解析を進めたが、対象海域全体での残差は減少しなかった。しかし、黒潮続流域においては熱移流フラックスの効果で残差が減少することが確認できた。



学部生

海洋循環モデルによる津波アニメーションの作成
大嶋 宏
過去に東海地域で起こった安政東海地震から150年以上が過ぎた今日、東海地震はいつ起こってもおかしくないと言われている。そして、東海地震は1995年に起きた阪神・淡路大震災の規模を上回るとも予想されており、広範囲にわたっての被害が心配される。また、海洋性の地震には津波が付きものであり、昨年末に起こったスマトラ沖地震のように、津波によって被害は拡大していく。津波は1回だけでなく数回にわたって襲ってくることがあり、その速さは計り知れないほどである。そこで本研究では、数値モデルを用いて、東海地震を想定した津波に対するシミュレーションを行い、その計算結果に対してMATLABを用いてアニメーションの作成を行った。